独身者の機械
独身者の機械
商品名:独身者の機械 生産者:越後伝衛門 生産地:新潟 / 新潟市 酒米:愛山 特定名称:非公開 アルコール度数:16% 保存方法:要冷蔵 |
▼官能評価
やや冷。上立ち香は微量の4MMP. 含むと渋のニュアンスに加え、ジアセチル (乳酸臭)が目立つ。以降もジアセが終始出ている(速醸なのに)。含み香はやはり9号の乏しさで、ヨーグルト感が目立つ。愛山独特の甘みは一杯目からは感じられず(杯をすすめていくと出てきました)。終盤域には白玉粉とややアセトアルデヒド。酷評しているように思われますが、伝衛門全シリーズのなかで最も終盤域からの抜け感が涼しく、飲み飽きしない酒でした(ジアセの解釈は二分されると思いますが)目立たない酒、けれど向き合っていくとストラクチャーを感じられるものになっています。
▼余談
当初は愛山で「苦い恋」を表現したく、コハク酸を多めに出す予定でした。ビターな味わいに愛山の甘を合わせた「甘苦」ジャンルを開拓しようと試みましたが・・・・・・失敗しました。
下馬評では「溶けやすい」と聞いていたので、もろみの温度管理(特に最高品温)を普段の造りより低くしました。結果、溶けずに笑 アミノ酸度0.8と軽快な感じになり、「オトナの恋」というよりかは「青春の恋」よりになりました(ただ、「甘酸っぱい」みたいにならなくてホッとしています)。一般的な愛山酒の方向性とは逆に振った感じになりましたが、 速醸でこの乳酸感 (もともと生モト?と言われることも多かった僕の造りです)は、ある意味蔵ぐせが顕著に出ており、飲み手様のフィードバックが楽しみです。
▼ラベルなどの由来について
【色合い】
不文律として、愛山のラベルにはピンクをつかう、というものがあると感じ、背景はピンクにしました。「機械の(性)愛」というモチーフにあわせ、そこに「コンプレックスハーモニー」の茶色系をあて、自然界には存在しない人工的で斬新な印象を与えるよう試みました。
【ネーミング由来】
愛山を使用するにあたって、愛についてガラにもなく考えてみました。
自身の研究していた分野での連想もあり、やはり「性愛」は欠かせない要素だという結論になりました。
そこから、まず「愛のパレード(ピカビア)」という芸術作品が浮かびました。
この時代(1920年ごろから)機械と性愛をモチーフにしたものが多かったのですが、その最高峰がマルセル・デュシャンの作った、《彼女の独身者によって裸にされた花嫁、さえも(通称:大ガラス)》です。
三次元の独身者たちと、二次元化した花嫁が上下に描かれています。
そしてそこから、僕の人生のバイブルである、ミシェル・カルージュの名著『独身者の機械(高山 宏訳)』が思い浮かびました。当時の時代診断が見事に描かれていて、のちの現代思想にも繋がってきます。
さまざまな愛の形を許容するよう、社会から強制されているのが昨今の世の中です。
決して派手なお酒ではないのですが、静かな空間でグラスを傾けながら、パートナーや家族あるいは独りで、愛について語る際の一杯にしていただけたら幸いです。
(生産者資料より)
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